第13章 75歳以上の手術の実際
現在79歳の彼女のケースを説明しましょう
彼女は、横須賀に通院は不可能な地域です。
そして、いろんな問題がありました
![]()
第一ポイント 両足の股関節が人工関節で、手術のポーズがとれない
両股関節がまったくうごかいないことは、手術のときに、出産のポーズをとるので、大変おおきな支障になります。でも考え方の問題です。まず、大切なことですが、
全身麻酔をかけるとポーズが簡単にとれてしまう。しかし、これが最も危険
ということです。全身麻酔をかけると、痛みをまったく感じなくなります。そして、股関節は、らくらくうごいてしまいます。すると、つい、意識があれば、いたがってとれないような姿勢もとれてしまいます。でも、もともと意識があるときに、いたくて、その姿勢がとれないとうことは危険ということです。ですから、全身麻酔をかけて、本来できないような股関節の稼働をさせると、骨折をおこします。ものすごく危険な行為なのです。
彼女の場合は、よくよく診察をしたところ、股関節を両方とも人工にかえたほかに、坐骨神経の痛みがとてもつよいことがわかりました。そこで、計画としては
坐骨神経ブロックを定期的および手術前は連日おこなって、痛みをとる治療をする。
とかんがえました。

さらには、手術のときに、両足の両サイドに看護助手を1名づつつけて、いたくないか確認し、さらには、術中、足をもんだり、あたためたりしました。
![]()
第二ポイント 心臓がわるいので、血液サラサラ薬をのんでいる
血液サラサラ薬を、ほんとうにのまないと大丈夫なのかしらべました。すると、2週間ぐらいなら休むことができるとわかりました。もちろん、休んでいるあいだ、その分、リスクがあります。そこで、かんがえたのは、
自分のちからで、血液をさらさらにしていただこうとうことです。
まず、排尿日誌をとり、24時間まんべんなく、水分をとる
ことを、学習していただきました。
血液さらさら薬は、もしも血管に血のかたまりがつまったらこまる、そしてそれは、本人が水分の摂取が十分にできないときにおこります というものです。
ですから、彼女に、努力をうながし、生活をみなおして、1日1500mlの尿がでるように水分をちゃんととしました。
つぎに、遠方であることも考慮して、横須賀に滞在中の循環器内科の主治医をさがしました。ありがたいことに、横須賀の市民病院にて1か月限定で循環器の主治医がみつかりました。
これで、もしものときに、循環器に入院できます
あとは、僕が、出血しないような手術 つまり、術後すぐに 血液さらさら薬を再開できるような手術を実現すればいいわけです。
![]()
第三ポイント 陰部のケアが十分できていないこと
陰部のケアが十分できないので、まいにち、自分自身でおゆであらうように努力していただきましたそれでも十分にならず、いつも診察すると、陰部から大量のおりものがあります。そこで毎日、僕が洗浄を外来でしました。

このことで、かなりきれいになり、手術当日までにには、おりものがなくなりました。
![]()
第四ポイント 体力のない人の抗生物質は注意すること
彼女の場合は、無事、入院することもなく、手術がおわって3日目には故郷にかえりました。その間は、葉山のマンスリーマンションですごしました。
近いので、往診も可能だし、術前に毎日陰部を洗浄するには、都合がいいので、家族みんなで用意してくださりました。
また、2010年10月からは、このようなケースでは入院して、僕のクリニックへ通院も可能になりました。入院先は、聖ヨゼフ病院 といいます。内科・外科・整形がおもの病院ですが、こじんまりとアットホームです。
![]()
以上のポイントを十分に考慮したところ、この患者さんは、
なんにも問題おきずに、おわりました
とにかく丁寧にすることにかぎります
それに、何歳でもラクな体になりたいのですから、
努力する価値があります
![]()
さてこれだけ配慮をしても、中には、大変重要なときがあります。それが75歳以上というものです。その代表格が、偽膜性大腸炎です。これは、体力のない人で抗菌剤に負けてしまう人におこります。めったにおきませんが、起きた時に、すぐ気がつくことがとても大切なのです。
次は、別の人の話です

これは、大腸ファイバーの検査の結果です。
この方は、骨盤臓器脱の手術が大変順調におわり、10日目から突然の下痢がはじまりました。これは、抗生物質を3日間投与したことで、腸内細菌がなくなり、そこに、雑菌が侵入して腸炎をおこしたのです。携帯電話で、『下痢と腹痛が突然つよいの、、』とう言葉をきいて、そこで、すぐにクリニックにきていただいて、大腸ファイバーを実施しました。すると、答えは、偽膜性大腸炎とかんがえました。当院では、4月から横須賀市内の総合病院の聖ヨゼフ病院のアドバイザーもしているので、その関係で急きょ入院ベッドを確保して、1か月ほど入院されました。この場合も、僕の場合は、あらかじ緊急入院できる病院連携をしておりますので、うまくできました。
大切なのは、めったに起きないけど
術後1週間ぐらいして、『とてもお腹がいたくて、そして、すごいげり』
は要注意
(すごいというレベルの下痢です。下剤で便が下痢になったレベルではありません。脱水をおこすレベルです。)
この病気は、抗生物質を投与した人すべてに可能性がありますが、本当にめったにおきません。僕の医師としてのキャリアの中でも、2人目です。つまり、ほんとうに見落としやすいのです。みつけだすことは、医者としての真骨頂といえるものなのです。入院していたから見つかるということもなく、入院して退院してしばらくすると、でてくるケースもあるので、まったく関係ありません。いかに、患者さんと気軽に話をできるようにしておくかに、かかっているのです。
では、偽膜性大腸炎についてまとめてみましょう
Q1:偽膜性大腸炎とはどのような病気ですか?
A1:抗菌剤を投与すると大腸粘膜に菌交代現象がおこり、大腸にク口ストリジウム・ディフィシル(医学的にはグラム陽性嫌気性桿菌)という多くの抗菌剤に耐性を有する細菌が異常増殖します。その際、毒素(エンテロトキシン、サイトトキシン)を産出して腸管粘膜を傷つけ、偽膜を形成する大腸炎を発症させます。抗菌剤投与後、1週前後で発症する例が多いといわれております。好発部位は直腸からS状結腸の間です。抗生物質の投与は、たった1日でもあります。
骨盤臓器脱の手術では、術後に下剤で便をやわらかくします。でも、下痢にはしません。下痢なら下剤をへらして、やわらかい便レベルにします。それとは、全然ちがいます。脱水をおこすようなひどい下痢です。
Q2:偽膜性大腸炎ではどのような症状がでますか?
A2:下痢、腹痛、発熱等の症状が徐々に発症するため、診断が遅れることもあります。主症状は粘液・血液を伴う激症下痢、腹痛、発熱、白血球増多などがみられます。電解質異常や脱水を起こす重症例では痙攣を伴い数日で死亡する場合もあります。
ですから、下痢で脱水をおこすような場合は、すぐ連絡が必要です
めったにはおきません。僕の医師人生でも2人程度です。しかし、みつけだすことが重要です。術後は、こまめに家族に連絡をしましょ。目安として、食事がおいしくとれるなら、まず大丈夫のことがおおいです。腹部のひどい痛みがあり、トイレで、尿のごとくの下痢があり、そして、また腹部がいたくて、またトイレに尿のような下痢があり、1日中トイレで下痢をしてるようだと、偽膜性腸炎とはいわずとも、そこそこの軽い腸炎にななっています。点滴や入院が必要です。

★ 高齢者もなおしたい
そうおもってからは、日夜高齢者医療の勉強です
ひごろの何気ないことがヒントになります
手術をうけるみなさんも、どんなことをすると自分の体力がつくか
ひごろから考えましょう
『たとえば、おすをのむととてもいい』
『しそジュースが体調がいい』
『あさ、ばななをたべるといい』
『起床時にほっとミルクがいい』
なんでも、助けてくれます
![]()





