女性泌尿器科専門のクリニック
1. はじめに
骨盤臓器脱(性器脱)の治療を理解する基本は、いままでの泌尿器科、婦人科、外科の枠組みでとらえないことです。骨盤の中には、泌尿器科が担当する尿道と膀胱、婦人科が担当する膣と子宮、外科が担当する肛門と直腸があります。
ずっと、性器脱という日本語訳があてられてきましたが、骨盤臓器脱という日本語約がおおくもちいられるようになりました。
ちゃんと理解するには、まずは解剖学から学びましょう。
これらの臓器は、排尿、生殖、排便の3つのシステムをつかさどっています。でも、それぞれが独立しているのではなくて、相互に協力しています。たとえば、妊娠のときなど、妊娠そのものは、他のシステムにおおきく影響し、影響されますね。

1)骨盤臓器脱(性器脱)とは何ですか?
妊娠、出産、肥満などによって骨盤底筋が傷ついたり、緩んだり、硬くなったりすることを、
マンガ:奥井識仁&もたいみゆき(講談社)
2)骨盤底とは何ですか?
骨盤底は人間でとくに発達したもので、骨盤の一番したの強靭な膜なのです。
骨盤底の一番強い膜を、骨盤隔膜といいます。ご存じとおもいますが、胸と腹の境界にある
一番強固な膜は、横隔膜。おなじく、隔膜とよぶにふさわしい太くて丈夫なものです。

ところで、最近は、ダイエットの本に骨盤のことがのっていますが、
『骨盤骨』『骨盤底』『骨盤』は別の用語なんです。

よく勘違いされますが、骨盤というのは、この絵のような骨盤骨をふくむ高さを意味します。
骨盤骨と骨盤というのは、混同しないようにしてください。

さて、骨盤底に話をもどします。骨盤底は、骨盤骨の一番したにあって
まるで、ハンモックのように、その上に、膀胱、子宮、直腸をのせています。

この骨盤底は、妊娠、出産、加齢、肥満、運動不足など
いろんな要因で、ゆるゆるになったり、カチカチになったりします。
たとえば、尿道のmわりがゆるゆるになると腹圧性尿失禁などになります。
そこで、治療は、この骨盤底をいかに若いころとおなじような
感じにするかということになります。それが、骨盤底筋体操であり
手術であるのです。

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作者から、
骨盤臓器脱は大変わかりにくい病気です。ずっと、『わかってくれない病気』の代表でした。しかし、だんだん知識が普及して、いまは、そのことを知っているDrもずいぶんふえました。作者の奥井識仁は、骨盤臓器脱を理解するのに、2001年に米国に臨床留学をしてはじめて、専門的なトレーニングををうけることができたのですが、今は日本国内はずいぶん進んでいます。しかし、一部に誤解や情報をあやまって理解されている患者さんがいることも事実です。ですから、みんなにわかりやすいように、マンガを徹底的につかってホームページををかいています。どうかみなさんの参考になれば、うれしいです。
(骨盤臓器脱専門医療法人 ウロ-ギネ・ネット)
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医療法人ウロ-ギネ・ネットの紹介
泌尿器科と婦人科の境界領域の疾患を診る分野を、英語でUrogynecologyといいます。これはUno「ウロ」=泌尿器科、Gyn「ギネ」=婦人科を合わせた言葉です。今まで医学の谷間といわれた境界領域ですが、この分野を私はハーバード大学で学びました。法人名の“ウロ‐ギネ”とは、泌尿器科「ウロ」、婦人科「ギネ」からとったものです。
また、この視点で外来の患者さんに接するのはもちろんのこと、帝京大・独協医大の2大学の講師の立場からの後進育成を通じて、東京-埼玉-神奈川の3拠点での様々な人的つながりを構築(ネットワーキング)していくことから、“ネット”という言葉を用いました。
Uro-Gyn.net HealthCare was founded in 2010 by Yokosuka Urogynecological
and Urological clinic. Uro-Gyn.net is an integrated health care system
that offers patients a continuum of coordinated high-quality care. The
system includes primary care staff and specialty physicians, a community
clinic, the four founding academic medical bed, and one specialty same-day
operation room.
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彼女は、65歳から、膀胱瘤でなやんできました。私たちとであったのは、85歳です。その時は、心筋梗塞、心臓血管バイパス手術、頸椎症を患い、在宅酸素療法をうけていました。いままで20年間、手術をしてくれる医師を探してきたそうです。しかし、どこも、高齢でリスクが高いので、麻酔をけかることができないので、断ってきました。そこで、当院の院長の奥井医師を受診しました。最初は、なやみましたが、彼女の希望が大変つよいことや、息子・娘たちを、彼女自身が説得されていたので、手術をしてあげたいと考えました。
これだけのリスクをひきうけるのですから、彼女にも頑張ることをおねがいしました。具体的には、血液さらさら薬を手術前にやめますので、自分でペットボトルをもってあるいて、水分を十分補給して、血管がつまったりしないようにしました。深呼吸をおしえて、とくに、ヨガの腹式呼吸を練習しました。この成果で、87歳のときに、手術できました。
それから4年。91歳のときに、彼女は天寿を全うしました。それまでの日々は、ほぼ楽な時間がながれました。たとえ、87歳で手術しても、91歳まで、膀胱瘤の悩みを感じることなく、生きてくださりました。
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彼女は、であったときは、27歳でした。最初の出産の直後に膣がさけてしまいました。その場で縫合をしたのですが、産後に、赤ちゃんをだいてあやしていると、どんどん内臓が落ちる感じがありました。直腸がおちてくる直腸瘤だったのです。そこで、いろいろな病院を受診しました。多くは、おちた直腸を、膣壁をきることで、持ち上げる手術でした。しかし、彼女は心配で、当院を受診しました。
彼女は、まだ若いので、セックスをすることができないといけません。それに、妊娠・出産を希望します。しかし、膣壁をきりとり、直腸をもちあげると、おおくは、痛みがでます。椅子にすわると、つっぱるような痛みです。そこで、そのような治療は難しいとかんがえました。そこで、まず、人工メッシュで、直腸にカバーをつける手術だけをしました。膣から、膣の壁がのびた不快感はとれませんでしたが、排便はスムーズになり、セックスにも痛みを感じなくなました。
そして、2年後に出産をしました。出産のときに、膣にきらずに残した部分が、よいクッションとして役割をはたしました。もちろん、今後、お子さんがおちついたころに、のこしておいた膣粘膜を、ほどほどに切除する予定です。
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彼女は、直腸瘤になり、こかんにピンポン玉のような違和感が継続するので、地元の大学病院で、膣形成術をうけました。それ以来、膣の後ろ側の痛みがつよくて、この痛みは、座るときついと感じるものです。どの医師に、相談しても、『直腸がおちているのは、なおっている。問題ない。性格の問題』といわれて、相手にされません。
そこで、当院に受診して、いろいろ一緒にかんがえました。おそらくは、前回の手術で、膣を切りすぎたことが問題だとおもいました。そこで、麻酔をわずかにかけて、膣の切除部分を剥離して、すこしずつ、しめたり、緩めたりしながら、一番よい位置をさがしました。すると、おおはばに、膣粘膜がたりないことがわかり、そこで、人工メッシュで土台をつくり、その上に皮膚移植をしました。手術中に、何度もたちあがり、痛みとつっぱりと下垂感のバランスのよい場所をさがして、ぬっていきました。その後、突っ張り感は消失しました。
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彼女は、30歳の子宮全摘、40歳から股間になにかおちてきました。そして。70歳から、それは巨大になり、膝のあたりまでありました。そのために、歩くこともままならず、80歳のときに受診しました。この時点で、すでに、4つの大学病院で手術をことわられてきたのです。性器脱の表面は炎症をおこし、そして、ただれて、血がたくさんでやすい状況で、膿もおおいのでした。
であったときに、大変やる気があることがわかりました。そこで、最初におねがいしたのは、『長生きする』という約束です。それは、準備がかかるからです。まずは、漢方と乳酸菌をのんで、体質をかえることを、おねがいしました。飛行機で受診するので、3か月に一度あいました。膣には、いろいろなクリームをためして、かつ、清潔になるように、陰部洗浄を指導しました。さらには、長らく膀胱がおちていたので、間歇的導尿をおねがいして、残尿を1日2回とりのぞくことで、膀胱の神経をよみがえられることを、提案しました。彼女は、8か月ほど努力をしました。すると、膣の粘膜の膿は激減し、膀胱の中の炎症は、かなり改善しました。
ここで、チャンスとかんがえて、横須賀にきていただきました。1日2回、奥井医師自身の手で、陰部洗浄を1週間繰り返し、手術にのぞみました。手術は、高齢なので全身麻酔をかけることができないので、神経ブロックを駆使しました。手術は、90分かかりましたが、出血量は60ml程度でおわり、この年齢には、十分すぎるほど軽くおわりました。
その後、ずっと元気でいます。定期的に、写真付きの手紙がおくられてきます。
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彼女は、60歳のときに、人工メッシュテープをもちいた尿失禁の手術をしました。そのときは、膀胱のおちている感じはありましたが、尿失禁があったとはいえませんでした。入院を10日間して、安静にしましたが、65歳のときに、膀胱がおちてくる性器脱になりました。彼女としては、膀胱瘤を修復する手術をのぞみました。しかし、膀胱炎をたびたびおこすので、心配でなりません。そこで、当院を受診されました。
60歳のときの手術は、TVT手術といいます。この時は、尿道をもちあげる部分のみ人工テープでもちあげたのです。2000年ごろは、日本にこのTVT法という技術が導入されて、尿失禁が飛躍的に改善したのですが、そのとき膀胱瘤については、おくれぎみでした。おそらく、尿道をもちあげて、膀胱がおちていることは、膣壁を縫い合わせただけだったのでしょう。当院で、内視鏡で確認すると、膀胱には大変慢性炎症が強いことがわかりました。それは、尿道と膀胱の位置が、尿道だけ強力なテープで固定され、膀胱は本来のゆるんだ筋肉だけだから、アンバランスな力関係ができていたのです。
そこで、内視鏡で何度も確認をしながら、膀胱と尿道の位置関係が、正常な女性とおなじところまで、膀胱のまわりに、人工メッシュを挿入して、全体的にもちあげました。
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彼女は、子宮を摘出したときに、膀胱に傷がつきました。そこで、子宮の手術のときに、膀胱をぬいあわせました。しかし、わずか1か月で、膀胱の縫い合わせた傷がひらいて、膀胱の中の尿が膣からもれるようになりました。そこで、その主治医としては、傷のついた膀胱がよくないと判断し、膀胱の一部をきりとって、膀胱をふたたびぬいあわせました。しかし、これも、すぐに傷が開いてしまいました。そして、膣から尿がもれつづけたのです。
そこで、奥井医師をたずねてきました。彼女の熱心なきもちを感じて手術にふみきりました。手術までは、大学のカンファレンスで倫理性を確認しました。我々は、あたらしく考案した新技術で膣から膀胱の傷を閉鎖しました。そして、再発せず、すごしております。
このまで、たどりつけたのは、本人の努力がおおきいようにおもいます。新しい技術では、膀胱は、切除して縫いつけるのではなく、ゆるめて、粘膜が再生するようにしたのです。
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彼女は、宗教的な理由で輸血を希望しません。そのために、いくつもの大学病院で手術をことわられてきました。とくに、麻酔をかける際に、全身麻酔をかけるうえでは、多くの麻酔科医と患者さんとの間で、契約がなりたたないからです。私は、宗教には、一切関知しませんが、すくなくとも、われわれの施設では、性器脱に関しては、神経ブロックか仙骨神経の麻酔のみで実施できます。また、いままで、我々は日本に帰国して以来、性器脱の手術は平均50ml以下ですませることができています。このため、この方の手術をひきうけました。
手術は、日帰りでおこない、出血量は20ml程度で、人工メッシュをもちいた技術を行うことができました。このため、本人に対してはストレスを感じさせることが無くすみました。
(ただし、われわれの取り組みは、無輸血で確実にできる性器脱の手術に限定されます。おなじ宗教の問題で、手術をお願いされたケースに、癌がありました。癌は無輸血は無理なことの方が多い病気です。確かに、初期癌であれば、日帰りで手術をできる場合が過去ありましたが、大変まれなケースです。また、癌の手術を無輸血を約束して引き受けてくれるDrの知り合いは、私にはいません。)











